ひろしまを考える旅 50周年記念コンテンツ

Piece of Peace ~9条の碑に込められた想い〜

平和的生存権を謳った前文と、戦争の放棄と戦力の不保持を宣言した第9条から「平和憲法」と呼ばれたきた日本国憲法。日本YWCAは、この憲法が施行された直後から憲法が時の政権によって改悪されることのないように注視し、また、平和主義・民主主義・基本的人権の尊重の理念を私たちの暮らしの中で活かそうと取り組んできました。私は2013年から2016年まで日本YWCA憲法チームに所属し、政治に関心のない若い世代や海外に向けて日本国憲法の素晴らしさを発信する活動をしているうちに、日本国憲法に縁のある場所や碑を訪れるようになりました。

例えば、東京・六本木1丁目にあるオフィスビルの入り口の脇には、当時の外務大臣官邸でGHQ(連合国軍総司令部)と日本政府との間で日本国憲法草案について白熱した議論が交わされたことを示す「日本国憲法草案審議の地」の碑が立っています。

また、在日米軍基地の約7割が集中する沖縄には、憲法9条の記念碑が幾つもあります。那覇市の与儀公園の憲法9条の碑は日本で行政によって最初に建てられたものです。

沖縄戦激戦地の一つである南風原町の、ひめゆり学徒隊が傷病兵の治療にあたった陸軍病院壕跡の近くにも鎮魂と平和への願いを込めて憲法9条の碑が建てられました。

「ひろしまを考える旅」に携わるようになり、広島市にある護憲の碑を訪ねる機会を与えられました。「生ましめんかな」、「ヒロシマというとき」や「折づる」など数々の原爆詩を残した被爆詩人・栗原貞子さんの長女真理子さんが、反戦・反核、護憲運動に熱心に取り組できた貞子さんと夫の唯一さんのために建てた碑は、栗原家の墓所にあります。碑の正面には「護憲」の文字が、裏側には憲法9条の全文が刻まれています。

日本国憲法の誕生時に米国の軍政下にあり、平和憲法から疎外されていた沖縄の数々の9条の碑からは、1972年に本土復帰を果たしても、未だに最高法規である憲法よりも日米地位協定に支配され続けている人々の、憲法9条を目に見えるものにしたいという気持ちを強く感じました。世界初の原爆が投下された広島の地にあるこの護憲碑の前に立ち、力強く刻まれた「護憲」の文字に、侵略戦争への真摯な反省から生まれた日本国憲法の恒久平和主義を堅持し、全世界の人々が核の恐怖から免れて平和のうちに暮らすことができるように力を尽くすという栗原貞子さんとご家族の決意と祈りに思いを馳せました。沖縄と広島の9条の碑に込められた平和への願いを受け継いで、核も戦争もない世界を目指して、微力ながら自分にできることに取り組んでいきたいと思います。

Aki Yoshida

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