国連女性の地位委員会(CSW)参加報告 「慰安婦」の苦難と、すべての女性にとって公正な社会の実現のために闘う
15Mar.
国連女性の地位委員会(CSW)参加報告
「慰安婦」の苦難と、すべての女性にとって公正な社会の実現のために闘う
ニューヨークで開催中の第57回国連女性の地位委員会では、NGOが主催する「パラレルイベントと呼ばれる一般公開のイベントが開催されます。 その1つ、新日本婦人の会が主催した『日本軍「慰安婦」の問題解決に向けて』のイベントでは、元国連大使のアンワルル・K.チョウドリ さん、女性国際戦犯法元共同代表のインダイ・サホールさん、平野恵美子新日本婦人の会国際部長が「女性にとっての平和と安全」をテーマにパネルディスカッションをし、日本YWCAの参加者が地元沖縄における軍事基地と女性に対する暴力の問題について、会場から発言しました。
第二次世界大戦中、10万人を超える主にアジア諸国の女性たちが「大日本帝国軍」(以下、日本軍)の性奴隷制下に置かれました。現在も日本政府は、この恥ずべき戦時中の事実を否定し続けています。1945年は第二次世界大戦の終わりであり、また、性奴隷にならされた女性たちの粘り強い闘いの始まりでした。 「慰安婦」と呼ばれる性奴隷の被害者の多くは、韓国、中国、フィリピン、そして日本の女性たちでした。女性たちは皆、日本軍が設置した「慰安所」における性暴力と苦痛・苦悩の被害者です。
元「慰安婦」女性たちの尊厳回復と正義を求める半世紀にわたる闘いは、彼女らの人権の回復のためだけでなく、性暴力を受けた女性、性奴隷として監禁され極めて深刻な人権侵害に遭っている女性など、すべての女性のための時代(と空間)を超えた闘いです。 これは、平等、公正、平和の持続、よりよい世界をすべての人にもたらすための闘いです。
パネルディスカッションでは、日本軍と当時の軍事政権が行った第二次大戦中の犯罪行為を、現在も日本政府は認めていないという問題が指摘されました。 これは被害者に関わる問題にとどまらず、いかに現在の日本政府が女性の価値や人権を軽んじているかを表しています。それは、歴史から学ぶものは無く、女性の苦しみは重要ではない、という視点です。 歴史の教科書や教育方針に徹底して「慰安婦」問題を盛り込むことのない現状では、若い世代が断片的な歴史しか学ぶことができず、チョウドリさん曰く「若い世代がせっかく卒業証書や学位を取得しても、自分たちの歩んで来た歴史、その事実や本質を学ぶことがなければ、果たして教養があると言えるでしょうか?」というものです。さらに、「問題は、教育が、現在そして未来へ続く女性の人権と公正のための世界中の闘いに、どのように活かされるかということです」
サホールさんは「「慰安婦」の枠を超えて、すべての女性をさげすむ行為や考え方に目を向ける必要があるでしょう。国際的に両性の平等が受け入れられ、実現されなければ、平和維持や安全が広まることもなく、この問題はより広い文脈でとらえる必要があります」と述べました。
「平和の実現は、両性の平等に密接に関わっています。両性の平等が認識されなければ、世界の平和の実現とその維持は果たされないでしょう」とチョウドリさんが続け、さらに、すべての意思決定機関のさまざまな意思決定の場に、女性が参加することの大切さを国連組織を例に語りました。「国連もまだまだです。いまだ、女性の事務総長が誕生していません。8人の歴代事務総長はすべて男性です。なぜ、女性事務総長が誕生しないのでしょうか。時代は熟しているのに」
最後に日本YWCAの参加者が会場から、米軍基地の存在で頻繁に起こる、地元沖縄での米兵による地元住民の殺害、レイプ、傷害、窃盗などの問題を共有しました。 沖縄が日本へ復帰した1972~2009年までの統計だけでも、逮捕に至ったケースだけで5634件、内レイプを含む重大犯罪は562件に上ります。2010年までのレイプのみの犯罪件数は130件に上ります。 こうした犯罪は、被害者が訴え出なければ犯人が裁きを受けることもありません。 (日米地位協定の下、たとえ被害者が被害届を出したとしても、身柄引渡しや公正な裁きがなされることほとんどありません) 多くの犯罪被害者は、精神的苦痛や告訴手続きの難しさから泣き寝入りせざるを得ず、犯罪件数として数えられているのは「氷山の一角」なのです。「日本人、アメリカ人と同じように、沖縄の人の人権も尊重されるよう訴えます」と結びました。
「慰安婦」の尊厳と正義のための闘いは、過去のための闘いに留まらず、現在も続く不正義の告発です。日米両政府が、沖縄に対する自らの重大な人権侵害を認めない限り、状況の改善はありえません。日本YWCAは、武装・紛争下でのレイプを含む性暴力からの女性と少女の保護を規定している、国連安全保障理事会決議1325号の完全な履行を求め、世界YWCAもまた、日本YWCAの正義のための奮闘を支えています。
原文:世界YWCAウェブサイト記事(2013年3月11日掲載)
翻訳編集責任:日本YWCA