ウクライナYWCAからのメッセージ:戦争につながる概念を平和への意識に変えていく方法
9月21日の国際平和デーに開催した日本YWCA主催の「国際平和デー#herstory」のイベントの中で、ウクライナYWCAのナターリヤ・ウリアネッツ会長がメッセージを共有し、自分自身が日々戦争の状況の中で思い続けた、戦争や紛争を回避する考え方について語りました。
ウクライナでは今年2月から続くロシアによる軍事侵攻で、数え切れないほどの人が犠牲になり、また自宅、家族、仕事を失いました。現在ウクライナYWCAのメンバーたちは、自分自身が深刻な状況に置かれている中で、現地の女性や子どもたちへの支援活動を立ち上げ実施していこうとしています。
国際関係でも日常生活でも、紛争は常に発生しており、どのように平和的な解決方法を模索し、共存の意識を養うかは絶えず学ぶべき課題です。ナターリヤさんのアピールは、各国から参加した一人ひとり、そして私たちの社会全体にとって重要な提起でした。
この世には6種類国際紛争があります。すなわち、民族的紛争、宗教的紛争、イデオロギー上の紛争、領土紛争、政府による紛争、経済的紛争です。最初の3つは理念をめぐる紛争であり、後の3つは利益をめぐる紛争です。ウクライナの戦争には、そのほぼすべてが含まれています。
私たちが戦争・紛争の解決について語るとき、私たちの目的はシンプルかつ野心的なものです。すなわち、人間の苦しみを減らし、より平和な世界をつくることです。
ウクライナ・ロシア双方とも、戦争を望んだわけではないのに、戦争以外の対話ができませんでした。言葉と行動はつながっており、勝敗・復讐・世代を超えた敵対・力強い戦士のイメージなどの表象から離れられない限り、戦争を止めたくても止めることはできないでしょう。
一度戦争の精神性に陥ってしまえば、戦争をきれいに終わらせることは不可能になります。一つの戦争の勝者は次の戦争の敗者になるでしょう…第1次世界大戦からアフガニスタン、ウクライナに至るまで歴史が教えているように、戦争は意味がなく、無慈悲で、終わりがないものです。
人々が、豊かで健康で持続可能な地球という同じ目的に向かいさえすれば、そこに戦争を終わらせる道はあります。戦争はこのような共通の目的にはそぐわないものであり、ナショナリズム・部族主義・人種的・民族的分断など、戦争を取り巻く数々の言葉を、それらの人類共通の目標がいつ圧倒するかが問われています。
それらの分断は、人間の心から生じています。それは私たちがつくるから存在するのであり、大切なのは、私たちがつくったものなら私たちがなくすこともできるということです。
あまりに多くの流血と死に直面しながら、誤った思考のもとに戦争を推進し続けることは不可思議です。私たちは自分の心で枷を作り出し、自分たちを縛っています。自分の思考を変えなければ、その枷が外れることはありません。戦争の概念を変えていける、いくつかの例を挙げます。
- 「敵」という概念を緩和しましょう。「敵」は段階的に「対抗者」「競合者」「パートナー」「教師」そして最後に「対等な相手」と定義し直していくことができます。
- 尊敬を持って相手に対しましょう。そうしなければ最初から相手を失ってしまいます。
- 双方が相手に対して「不正義」と捉えていることがあることを認識しましょう。対抗する相手であっても、合意できる点はあるはずです。
- 許し、また許しを請うことができる体勢に身を置きましょう。ここで「許し」というのは、報復や復讐の欲望を手放すことです。これは真に勇気ある行動です。相手には許される価値がないと確信しているとしても、あなたには平安を手に入れる価値があります。
- 好戦性は避けましょう。それは攻撃と捉えられ、新たな敵対関係を生んでしまいます。
- 心の知性を使いましょう。つまり、相手の感情を理解し、その価値を認め、自分自身の感情と同等に扱うことです。個人的・文化的を問わず相手の価値観を理解しようと努め、対話を試みましょう。
- 戦争の霧は、互いに相手のことを知らない対抗者の上に降りてきます。その結果が、投影と偏見に基づく戦争です。目標は互いに受け入れることです。最も深いレベルにおいて、私たちは皆、同じものを求めています。
- 政治と宗教に関してイデオロギー的な言説を避けましょう。双方の側に恐怖があることを認識しましょう。自分の不安を表出させることを恐れず、相手が恐れていることが何かを問いかけましょう。
- 自分が正しい側であること、相手が間違っていると証明することにこだわらないようにしましょう。自分が正しい側でなくてはならないという欲を手放せば、自分が本当に求めるものが何かに意識を集中することができます。
これらのアイディアは、国家間であれ家族の中であれ、すべてのネゴシエーションの場で役立ちます。これらのアイディアが手元になければ、問題解決手段として活用することはできません。戦争とは最悪の問題解決手段です。それなのに、しばしば、私たちが抵抗・困難・後退に直面した時に、最初に取る手段が紛争です。
人々が問題の解決方法がわからずにいる時には、国家も同じようにわからずにいるものです。平和の基盤は、個々人の中の平和の意識です。国家間のやりとりをあなたや私が変えられなくても、私達は個々人が平和の意識の一ユニットとなり、これらのアイディアを日々実践していくことができます。この惑星が生き続けられるかどうかは、どれだけ早く、どれだけ多くの人がこの声を聞き取ることができるかにかかっています。