国際平和デー:アルメニアYWCAからのメッセージ
昨年9月27日から44日間にわたり、アゼルバイジャンとアルメニアの間で紛争が再燃しました。先月9月13日より2日にわたって戦闘が再開し現在も緊張状態は継続しています。
2022年9月21日の国際平和デーに開催されたオンライン・イベントには、アルメニアYWCAのアイーダ・ズラビヤン会長も参加・発言予定でした。過酷な情勢の影響で当日の参加は叶いませんでしたが、後日メッセージが届きました。
日本YWCAはすべての戦争と暴力を否定します。紛争によって被害を受け、苦しめられている人々と連帯し、国際連帯と世界平和を願い、戦争被害から人々の命と人権を最優先に守られことを求めて続けていきます。この厳しい状況下に発信したこのメッセージを「原文のまま」翻訳し、ご紹介します。日本で暮らす私たちには「暴力的」「一方的な発言」と思われるものも見受けられますが、戦禍にある人々の叫びとして、ありの ままの現実を、共に受けとめていければと思います。
アルメニアYWCAからのメッセージ
はじめに
世界のYWCA運動に関わる皆さま、アルメニアYWCAは、日本YWCAならびに国際平和デー記念イベントの参加者の皆さまに感謝を申し上げます。
ご存じのとおり、アルメニアYWCAは2015年にバンコクで開催された第28回世界YWCA総会にて世界YWCAの正加盟YWCAとして加盟しました。
また、アルメニアは、西暦301年に、世界で初めてキリスト教を国教とした国でもあります。キリスト教の価値観は世界共通のものであり、アルメニアYWCAは自国内でYWCA運動を強化することで基本的人権を推進しようとしています。
アルメニアYWCAは、平和的に活動を確立し広げることが難しい南コーカサス地方において、YWCA運動を代表する唯一の団体です。アルメニアYWCAの事務所は、アゼルバイジャンとの故郷から5kmの位置にあるノイエムベルヤンという小さな町にあります。戦争が続く間、私たちは防空壕の役割を果たしている避難施設の中で活動を続けようとしています。この施設は2020年に、台北YWCAの支援を受けて建設されたものであり、その支援にあらためて心からの感謝をお伝えします。
今回の戦争の「種」は、いつ、どこで育ったものなのでしょう?
1915年、オスマントルコは150万人のアルメニア人を虐殺しました。世界はその時、オスマントルコを非難することも制裁することもしませんでした。
2020年9月27日から、アルメニアの人々は2度目の虐殺の危機にさらされています。今日まで、オスマン帝国による虐殺の事実を否認し続けているトルコによって公然と支持されながら、アゼルバイジャンはアルツァフ(ナゴルノ・カラバフ)共和国に対する大規模な軍事攻撃を開始しました。この「争われている領土」(住人の大多数は有史以前からそこに住んでいるアルメニア人です)に住む人たちは、自決権、自治権、そして平和に暮らす権利を持っています。アゼルバイジャンは盟友のトルコとともに、COVID-19の感染爆発を受けてすべての戦闘を休止するよう求めた国連安全保障決議2532号に背きました。2020年11月9日に44日間の血生臭い戦闘の後で締結された停戦協定で、アゼルバイジャンはアルツァフの領土を占領し、何千人もの人があるいは死亡しあるいは難民となり、占領地では歴史的なアルメニアのキリスト教会が破壊され、一部はモスクに建て替えられています。
今回もまた、世界は「目を閉ざし」、戦争を始めたアゼルバイジャンとトルコを罰することをしませんでした。2020年の戦争で敗北したアルメニアは、いまだに力を取り戻すことができておらず、そしてまた2022年9月13日、アゼルバイジャンはアルメニア共和国が主権を持つ領土に攻撃を加えました。アゼルバイジャンの武装した軍隊はゴリス、ソフやジェルムクといったアルメニアの拠点に向けて大砲や大口径ライフルで激しく発砲を開始しました。無人戦闘機も駆使しています。
戦争は続いており、国際機関はその受け身で無関心な態度によって、トルコとアゼルバイジャンが開始した戦争を追認し支えています。
トルコとアゼルバイジャンの主な目的は、アルメニアが主権を持つ領土を通過してアジアに至る道を手に入れることです。商業的な利益のために、アルメニアの人々を故郷から追放し、その人生すべてを奪おうとしているのです。これは歴史的な意味を持つ状況であり、世界中の超大国はそこで利害を同じくしています。そのために、アゼルバイジャンとトルコの蛮行は罰せられないのです。
アルメニアの人々は恐怖と絶望の中にいます。自分の家の中にいても安らぐことができず、アゼルバイジャンによる残虐行為、拷問や自分の家と故郷を失う恐怖によって、肉体的・精神的に苛まれています。何百人もが、占領されたアルメニアの領土で捕虜にされ、住民の財産は奪われ、アゼルバイジャンは軍事拠点を強化してさらなる攻撃を準備しています。捕虜はあるいは殺され、あるいは拷問され、その様が録画されてソーシャルメディアに投稿されています。
私たちは特に、アルメニアの女性軍人に対して行われている残虐行為を非難します。このことは、繰り返し表出しつつ無視されてきた戦争のジェンダー的側面を再び明らかにするものです。フェミニズムは、平和を実現する力になります。私たちは、本物の安全も平和も、ジェンダーの正義と女性のエンパワメントなしに実現しないと考えています。女性の全面的で平等な参画なしに、持続可能な平和をつくることはできません。だからこそ、平和構築プロセスへの女性の参加が肝要なのです。
しかし、アルメニアYWCAは、協働する女性たちの力を信じており、社会的結束だけが、女性の参加による平和構築プロセスを通じて持続可能な平和をつくれると考えています。
平和と安全、ならびに女性、特に若い女性の参加と保護のために熱意をもって活動する女性の権利団体として、私たちは、世界のYWCAの仲間に向けて、私たちと連帯して立ち上がり、ともに声を上げるよう求めます。私たちとともに、責任ある主体に声を届け、力と影響力を行使して以下のことを行うよう求めてください。
- アゼルバイジャンとトルコによる攻撃、禁止されたクラスター爆弾やテロリストの傭兵による攻撃を止めるよう要求すること
- 女性、子ども、市民、戦争被害者の軍事攻撃からの保護を求めること
- 被占領アルメニア領土からの撤退を要求すること
- 国際社会に、アゼルバイジャンとトルコによる攻撃に対する適切な抑止的制裁措置を求めること
この呼びかけに耳を傾け、人間の最も基本的な権利である生命の権利を守るため力を貸してください。
(以上、アルメニアYWCAアイーダ・ズラビヤン会長より)