YWCA情報

パレスチナの平和を求める声明

2024年10月7日
日本YWCA
会長 藤谷佐斗子
総幹事 山本知恵

2023年10月7日に始まったガザ「戦争」から、悲しいことに1年が経ちました。私たちのうち、誰もガザへの軍事侵攻がこんなに長く続くことになるとは考えていませんでした。なぜ、私たちにはこの戦争が止められないのでしょうか。憤り、内省、祈りをもって、改めてパレスチナの平和を訴えます。

■犠牲になるのは、未来のある子どもたち

この間、ガザ200万人の人口のうち、4万人以上が戦争により命を奪われました。がれきの中に埋もれたままになっている人を加えれば、その数はさらに激増すると言われています。亡くなった人のうち30%以上が子どもです。低体温により死亡した新生児がいました。2024年6月時点で28人の子どもを含む34人が栄養失調により命を落としており、現在も3千人の子どもが栄養不良で命の危険にさらされています。現在もガザ市民数十万人が、非常に深刻な飢餓に陥っています。学校、病院、国連施設も無差別に攻撃され、そのたびに多くの死者が出ています。衛生環境の悪化により様々な感染症が人々の間に引き起こされています。予防接種で防げるポリオが、水とワクチンがないため、8月には子どもたちの間で大流行しました。医薬品もない中、麻酔無しの手術が行われています。電気の無い中で、ガザは冬と夏を越えました。もう一度冬を迎えることがあってはなりません。ガザでは水、食料、物資、エネルギーが枯渇し、インフラや設備は破壊され、衛生状態は最悪となっています。

■1947年までのパレスチナと、「自治区」とされた現在のガザおよびヨルダン川西岸地区

ガザは、1947年の国連・パレスチナ分割決議案で境界線が引かれるまでは、パレスチナ平野の南に位置する一地方でした。南をエジプトに接し、地中海沿岸の漁業と農業が盛んな豊かな土地柄で、アフリカ大陸、ヨーロッパ、東方をつなぐ交通・交易の要衝でした。

それなのにパレスチナ分割決議案と中東戦争によりガザ回廊と呼ばれる南北に細長く区切られた地区となりました。パレスチナ人がのちに「ナクバ(大災厄)」と呼び心に刻む1948年のイスラエル建国と数百の村々の破壊、それに伴うパレスチナ難民の発生。その難民の群れはガザにも流入し、人口の8割を難民が占める、世界で最悪の人口密度の土地となりました。2005年にイスラエル軍が撤退したものの、完全な封鎖下に置かれ、経済は破壊され、若者たちには未来への選択肢がありません。2008年、2009年、2012年、2014年、2021年と、イスラエルによる大規模な軍事攻撃が繰り返されました。

そのガザが、今回の戦争では南北に分断され、移動勧告という名の攻撃予告を受けながら、人々は避難生活を余儀なくされました。どれほどの恐怖、屈辱、困難だったことでしょうか。生きた人がいるままに町を更地にするような、このような野蛮な攻撃を、これ以上続けさせてはいけません。

ガザに耳目が集中していますが、同じくパレスチナ自治区であるヨルダン川西岸地区でも、イスラエル軍による違法な武力行使や人権侵害が激しさを増しています。

パレスチナの人々は自由と尊厳と平和を求めています。人の命も土地も武力で奪われてはならないのです。それは、地球上のどの国、地域、人たちにとっても同じ権利です。パレスチナにとって停戦は同等な力関係にある者同士の和解ではありません。人権が守られるためのぎりぎりの最低ラインです。最終的には占領の終結が不可欠です。

■どんな主張よりも人の命を優先に

イスラエルはあらゆる国際法規、勧告を無視して武力行使を続けており、ガザ地区および西岸地区を含むパレスチナには、占領の終結を求める正義があります。しかしそれ以上に、どのような主張に理があるかよりも、人の命が守られることが何より大切です。特に抵抗のできない子ども、病気や障がいを抱える人、妊婦、高齢者など、無辜の市民の命を守ることが大切ではないでしょうか。戦闘員や兵士の命も同様です。国の意志や都合によって人の命と権利が奪われ、より大きな武力と権力を持つ者の意向が、どんなに理不尽でも正しいものとされる世界のありかたはもう終わりにするべきです。

このような時にも、パレスチナとイスラエルそれぞれから学生を招いて平和について語り合うワークショップを開催している学生グループがあります。現地を訪ねてパレスチナ・イスラエルの人々と出会い、見聞きしたことをSNSで発信する若者たちがいます。イスラエル・ボイコット運動により、非暴力の手段で活動を続ける若者もいますし、欧米ではイスラエル支持一辺倒の政策に異議を唱えるデモが起きています。ハマースとイスラエルは、話し合いのテーブルに着くことさえできません。政治的な駆け引きよりも絶対的な優先事項として、生活と命を守る行動をすべての指導者に求めます。

■私たちにできること

ガザでの破壊が続くのは、米国をはじめ他国から武器が送られるからです。日本も無関係ではありません。私たち一人ひとりが、潔白ではありえないのです。自分たちには関係のないことと目をつぶっているうちに、私たちの納めた税金や、買い物をした代金が、どこかで子どもの命を奪う弾丸になっているかもしれません。今私たちにできることは、まず知ることです。世界で起きていることに、自分が無関係ではないことを自覚しつつ、知りえたことを周りに伝えることです。そして、小さな声をきちんと政治に届けようとすることです。

私たちの無関心が、どこかで権利を奪われ理不尽に苦しめられている人の足を踏むことになっているかもしれません。生活に隣り合う課題を共に悩み、解決のために小さな一歩を選ぶ、「良き市民」となる力を、YWCAは出会いと交わりの中で育てていきたい。

新型コロナウイルスによるパンデミックで、人々のコミュニケーションが制限されました。再び、ここから、人と出会いつながることから、小さな平和を周りにも広めていきたいのです。YWCAは、世界に姉妹を持つ国際団体です。パレスチナやレバノンのYWCAからも平和を求める声明が出されました。声を聴きあいつつ、共感をもって平和を求めていきます。パレスチナYWCA・東エルサレムYMCAが合同で呼びかける「オリーブの木キャンペーン」の「Keep Hope Alive(希望の光をともし続けよう)」のスローガンに祈りを合わせていきます。

昨年のガザ侵攻後、YWCAでは即時停戦を訴え、12月に「Silent Night For Gaza」のバナーを掲げて静かに街頭に立つ「クリスマス・サイレントアピール」を全国で行いました。以来、できる形での即時停戦の訴えを続けています。イスラエルに対する平和的、合法的な対抗措置をとる団体やガザを支援するNGO、医療関係者、学術関係者の方々ともつながり情報を得ながら、最前線で人々を支えようとする方々の声を聴き、広め、必要な支援を知り、できることを応えていきたいです。そして、国境という線ではなく、女性、子ども、小さくさせられた人たちが安心していられる居場所を作る線を描いていきたい。それが私たちの願いです。

■日本政府、メディアに求めること

現在、中東情勢はイスラエルがレバノン南部および首都ベイルートへの攻撃を強め、イスラエル・イラン間の緊張も高まっています。武力のぶつかり合いがエスカレートすれば「核」使用の脅威も起こりえます。

日本政府には、国際社会で武力によらず話し合いによる紛争解決に、ぜひイニシアチブをとることを求めます。日本政府には、米国への追随でなく独立国として、日本国憲法が持つ武力によらない恒久平和の精神に則った態度を明確にすることを、メディアには、顔の見える取材と、圧力に屈しない公正な報道、平和への提言を求めます。

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YWCA(ワイ・ダブリュー・シー・エー/Young Women's Christian Association)は、キリスト教を基盤に、世界中の女性が言語や文化の壁を越えて力を合わせ、女性の社会参画を進め、人権や健康や環境が守られる平和な世界を実現する国際NGOです。
1855年英国で始まり、今では日本を含む100以上の国・地域で活動しています。

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