コメント:G7広島サミットについて
2023年5月25日
「静かに歩いてつかあさい」という詩があります。水野潤一さんが、原爆投下後の広島の街、現在の平和公園のことを詠んだ詩です。広島の街は、原爆投下によって14万人が殺されて亡くなった大きなお墓なので、街をあるくときには人々を想って静かに歩いてほしい、という詩です。今回の広島サミットでは、さすがにバタバタと無神経に走る姿は見られませんでしたが、首脳声明や「広島ビジョン」の記述、最終日の岸田首相の平和公園での記者会見は、それに等しい結果となりました。
核なき世界を追求するといいながら、核兵器禁止条約に一言も触れず、核兵器の非人道性にも触れず、ロシアや中国を非難するだけでG7参加国自身の核軍縮には一切触れないどころか自国の核兵器保有を正当化し、その抑止力の必要性を強調しています。加えて、ゼレンスキー大統領の突然の来日。彼にとってはウクライナへの支援を求めるには絶好の機会だったかもしれないけれど、和平ではなく軍事支援を話し合うなら、よそでやってほしかった。被爆地広島が利用されたとしか思えません。
日本YWCAは、核兵器による惨事を二度と繰り返さないために、平和の大切さを学び、平和な世界を実現したいと願い、1970年からほぼ毎夏、広島の地で平和学習を実施してきました。広島平和記念資料館の見学や平和公園内・外にある慰霊碑をめぐり、フィールドワークでは被害と加害の歴史を学びます。そして、必ず被爆者の方々の証言を聴きます。
そのつらく想像を絶する体験を話してくださる被爆者の方々の平均年齢は84歳を超えました。被爆から78年が過ぎても、その耐えがたい苦しみを語ってくださるのは、同じ苦しみを誰にも体験させたくないという想いからです。原爆死没者慰霊碑に献花して、「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから」との言葉を胸に刻んだのであれば、1日も早く、努力目標ではない、核なき世界を実現するための具体的な道筋を示してほしいと思います。
日本YWCA
会長 藤谷佐斗子
総幹事 山本知恵