本の紹介:『灯火とともに闇のなかを~二つの世界大戦にみる英米の良心的兵役拒否者』
今年4月に出版された書籍『灯火とともに闇のなかを~二つの世界大戦にみる英米の良心的兵役拒否者』の紹介をお寄せいただきました。著者の 西村裕美さん、紹介文をお寄せいただいた下村泰子さんは、京都YWCAの元職員でもあります。
これまでの歴史を踏まえ、迷いと混乱の中にある現在の国際情勢においても重要な意味を持つこの本を、ぜひ手に取っていただければと思います。
『灯火とともに闇のなかを~二つの世界大戦にみる英米の良心的兵役拒否者』
著者:西村裕美 (花伝社、1700円+税)
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今、この本を読むこと
私はウクライナ、ロシアをめぐる世界情勢を重ね、今後の行方を手探りする思いで読み進めた。
プーチンの暴挙は到底許されるものではないけれど、ウクライナに対し、こぞって軍事支援、武器供与をする国々。「国民総動員令」を出して18歳から60歳までの成人男性に国外脱出を禁じ、本人が望むと望まざるとに関わらず強制的にロシア軍と戦うことを命じるウクライナ政府。これに乗じて「核共有」「防衛費倍増」「改憲」等の言葉が目立ち始めた日本。息苦しい思いが募る日々に、この本は一条の光を感じさせてくれた。
「殺すなかれ」の実践と「戦争に与しない権利」の確立
この本では第1次、第2次世界大戦で良心的兵役拒否の制度化に大きく貢献したキリスト教クェイカーなどの平和主義者たちの足跡をたどり、私たちには「暴力に由来する戦争そのものを一貫して拒否する」というもう一つの選択(生き方)があることを気づかせてくれる。
「非暴力平和主義」の信条に基づき、戦争との関わりを一切拒否して抵抗し、兵役とは別の仕方で国や国際社会に貢献しようとする「良心的兵役拒否者」の存在に今こそ光を見出したい。
「いかなる緊急時(戦時)においても国民を一個人として尊重することができるか否か、個人の良心の自由を認めるか否かでその国の真価が明らかになる」という著者の言葉に、今後の国際社会、日本のありようが問われている。
「正義の戦争」を支持し、武力でしか解決策はないと主張する人たちの声ばかりが大きいこの世界で、平和を願ってもう一つの選択(生き方)を探している人たちに、この本を読んでほしいと思う。
「日本が再び戦争の当事国とならないことを切に願う。」(著者あとがきより)
(紹介文執筆:下村泰子)