パレスチナYWCAより:世界社会正義の日に際して
2月20日は国連で定められた「世界社会正義の日」です。2024年2月20日、この日に際してパレスチナYWCAから届いたメッセージを共有します。
「社会正義」とは、社会で機会や資源が公平に分配される状態を指します。社会正義の目的は、社会の中で正義と平等を確立し、すべての人がニーズを満たされ、人としての成長・進歩の機会が平等に得られることです。
社会正義の獲得は、多くの社会的・政治的運動の主要な目的です。それは協働と連帯に特徴づけられた社会を構築する上での土台となると考えられているからです。富や機会の不平等な分配は、人々の生活水準や経済へのアクセスの明らかな格差につながり、社会的・経済的な分断を増幅させます。
平等、すなわち贔屓や差別なくすべての人を等しく公平に扱うことは、社会正義の主要な要素です。居住、雇用、医療、教育、その他基幹セクターにおける平等な機会提供は、経済的社会状況の格差によってもたらされた社会不正義を是正するコンセプトの一つです。
世界社会正義の日は、2007年11月26日に国連総会によって採択されました。各国内ならび国家間において平和と安全保障を実現・保全するためには社会開発と社会正義が必要不可欠であり、同様に、社会開発と社会正義の実現のためには平和と安全保障、またあらゆる基本的自由と人権の尊重が不可欠である、という信念を認識した採択でした。
パレスチナの文脈では、社会正義とは複雑で多面的な問題で、多数の政治的・経済的・社会的ファクターの影響を受けています。イスラエルによる占領の結果として、パレスチナは数多くの困難と厳しい状況に直面しています。
パレスチナの人々は、自らのプライバシー、移動、経済発展の権利の行使を妨げる制限や障壁に直面しています。これらの制限には分離壁、軍事検問所、イスラエル入植地、そして医療や教育などの不可欠なサービスへのアクセスを妨げる複雑な許可制度などが含まれます。
ガザ地区が経験している状況はさらに困難になっています。2007年の封鎖開始以降、同地区の住民はすでに複数回のイスラエルによる戦争にさらされてきました。それは2023年10月7日以降継続している直近の攻撃、これまで世界で起きたどの事例にも類を見ない人道危機に至りました。
ガザの人々が極度の苦難に見舞われている今、社会正義は存在しません。ガザの人々は清潔な水、食料、医療、教育へのアクセスを得られない状態にあります。
居住、医療や教育などの基本サービス、ならびに社会福祉や最も困難な状態にある人々のための支援プログラムに重点を置いてきたパレスチナの歴代政権が、社会正義における大きな格差解消にむけて達成した前進は限られたものでした。イスラエルの占領によって課せられた制限が、同政府にとっての大きな困難をもたらしています。
全般的に、パレスチナに社会正義をもたらすには、占領の終結が不可欠です。その他の必要な施策には、経済成長の促進、すべてのパレスチナ人に就業、医療、教育の機会を確保することが含まれます。
パレスチナにおいて、市民社会機関(非政府組織、慈善組織、研究センター、学術機関、そのほか社会のニーズに対応し、個人や集団の権利の進歩に力を尽くす諸機関)は、社会正義の前進において極めて重要です。
この意味において、パレスチナにおける市民社会組織は広範な活動に取り組んでおり、そこには以下のような活動が含まれます。人権侵害を注視し記録すること、社会正義と人権に関する公衆教育、平等と市民参加の重要性に関するコミュニティの意識啓発、コミュニティ開発や個人ならびに社会全体にとってのよりよい環境を促進するためのプロジェクトやプログラムの実行、女性に対する性差別の撤廃、女性の権利促進、特権がなく弱い立場に置かれたグループへの経済的・社会的支援の提供、ジェンダーに基づく暴力の犠牲になっている女性たちへの安全と支援の提供、そしてパレスチナにおいて社会正義と人権を掲げる法律や政策の地域・国・国際レベルでの実現など。
パレスチナYWCAはこの分野において大きな役割を果たしています。ユースの市民・政治参加の強化に取り組み、女性の社会的・経済的エンパワメント・プログラム、社会正義に関するアドボカシー活動、そして周縁化され弱い立場に置かれたグループへの支援・援助などに焦点を当てています。多くの地域的・グローバル的運動や連合体への関わりに加え、パレスチナにおける国レベルの、また人権に関する課題に関する組織化や推進において不可欠な役割を担っています。