YWCAのあゆみ
時代の波は女性、とくに弱い立場の女性たちを翻弄します。
しかし、翻弄される女性たちを支える運動を始めたのも女性たちでした。
1905年YWCA誕生
YWCAは、イギリスでは産業革命、日本では明治維新という大きな時代の変化の中で、女性たちの手によって生み出されました。日本では、キリスト者女性たちが世界YWCAから派遣された幹事や宣教師の力を借りて1905年に創立し、翌年には世界YWCAに加盟しました。
若い女性をサポート
初期の活動は、若い女性の自立をめざし、学生を対象に進められました。1906年には青山女学院を会場に第1回の修養会を開催。その後全国のキリスト教主義学校を中心に学校YWCAが次々と結成されました。
また、急速な工業化に伴い非人間的な状況で働かされていた女子工場労働者や農村の女性を支えるために、東京YWCAはじめ、1910年代に誕生した横浜・大阪・京都・神戸YWCAが、それぞれ活動を開始。中でも工場や農村の女性の実情調査はILOにも報告されました。また働く女性のために名古屋に造られた「友の家」は、後の名古屋YWCA設立へとつながりました。
1923年の関東大震災では日本・東京・横浜YWCAの各会館が全焼しましたが、ただちに被災者の救援活動を開始しました。
戦争の波に揉まれて
1937年7月に始まったアジア・太平洋戦争は、YWCAの活動に大きな影を落としました。日本全国が厳しい統制の下、国を挙げて戦争協力を要求される中、YWCAはぎりぎりまで国際平和のメッセージを発信していました。しかし1940年には世界YWCAとの交流を中止し、機関紙に戦争協力的な記事を掲載するなど国際団体としての特質を失い、キリスト教団体の本質を歪めていきました。
平和を求める活動へ
敗戦後YWCAは、二度と悲惨な戦争を繰り返したくないと、それまでの社会奉仕の団体から平和を求めて働く団体へと大きく性質を変えていきました。各地にYWCAが発足しましたが、その多くは会館やスタッフを持たない小規模なYWCAで、身軽さを生かし活発に運動を展開していきました。
1960年代、米ソ対立の中で核実験が再開され、国内では憲法改定の声が強まりました。YWCAは平和憲法を守り生かすために「キリスト者と憲法」研究会を実施、その後40年にわたって全国的な「憲法研究会」を開催し続けました。
1970年の全国総会では、「『核』否定の思想に立つ」をスローガンに、核兵器の廃絶と原子力発電の撤廃を求め、現代文明の本質を問い人間の自由と尊厳を取り戻すことを運動の柱としてかかげました。翌1971年にはその実践として「ひろしまを考える旅」を開始しました。
その後も、日本軍「慰安婦」問題への取り組み、パレスチナの女性たちとつながり支援する活動、韓国YWCA・中国YWCAと連携しユースの国際交流・対話を通じた草の根の平和構築、核兵器禁止条約の制定を求めるヒバクシャ国際署名への参加と、一貫して平和を求める活動を続けています。
2011年3月11日の東日本大震災後は、「女性と子どもの安全と安心のために」をキーワードに、地震・津波、そして東京電力福島第一原発事故による被災者への支援活動を実施するとともに、「核」に依存する私たちの生き方を問い直し、脱原発に向けて取り組んでいます。
2020年初頭から世界に広がったCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の状況下では、女性、特に若い女性たちが社会的・精神的孤立など困難な立場におかれる状況が生じ、各地域YWCAでの女性の「セーフ・スペース」が広がっています。
『日本YWCA 100年史 日本YWCA100年のあゆみ―女性の自立をもとめて―1905~2005』
同著は、日本の女性運動の歴史に新たなページを加える記録であり、キリスト教主義学校(ミッションスクール)の草創期の働きや社会福祉事業の歩み、女性が中心となった国際協力がもつ意義を知る上で、欠かせない著作といえます。
100年史編纂委員会編
B5判横書き
本文編310頁・口絵16頁
年表編251頁
2冊セットケース入り
定価:3,500円(送料込4,000円)
- お申し込みは 発行物 ページから
- 書店での注文は「日キ販(日本キリスト教書販売株式会社)」扱い
年表
1855年 | イギリスで2人の女性が「YWCA」の名で活動を開始 |
1894年 | 世界YWCA設立 |
1905年 | 日本YWCA設立 |
1906年 | 第1回修養会 |
1923年 | 関東大震災被災者の救援活動を実施 |
1925年 | 第1回全国総会 |
1940年 | アジア・太平洋戦争下、世界YWCAとの交流中止 |
1945年 | 敗戦、平和を求める活動へ |
1962年 | 「キリスト者と憲法」研究会開催、以後「憲法研究会」を40年間開催 |
1970年 | 「『核』否定の思想に立つ」をスローガンに。 クリスチャンのみを正会員としていたのを改め、すべての女性とともに活動する運動体へ |
1971年 | 「ひろしまを考える旅」開始 |
1993年 | 日韓ユース・カンファレンス開始 |
2011年 | 東日本大震災被災者支援・リフレッシュプログラム、セカンドハウスプログラム開始 |
2012年 | 福島市にYWCA活動スペース「カーロふくしま」設立 |
2013年 | 公益財団法人に移行 |
2015年 | 第28回世界YWCA総会に「核兵器・原子力発電の同等な否定」決議提案・採択 |
2020年 | 第33総会期開始 |